物書大陸
ライターになるという想いを胸に、安定した職を捨て再度上京した松本バッチ。厳格な父親の理解は得られるべくもなく、自身の生活を賭したパチスロ生活が始まった。

−−ほぼパチプロだったんですか。
松本:わずかながらライターとしての仕事はしてましたけど、実績もない駆け出しのフリーライターなんで当然食える訳もなく、生活費はパチスロで稼いでましたね。打ちたい台をガマンするっていうのは初めての経験でした。その時期が一番、パチスロ打つのキツかったです。
−−絶対に負けられない、と。
松本:負けたら死にますから(笑)。忘れられないのが、当時最高レベルのハイスペックだった山佐の「パチスロバイオハザード」の設定6を9600G回して1万5000円負け、ってのがパチスロ人生で一番ストレスを感じた瞬間でしたね。薬剤師時代に「ニュー島唄」で21万投資したことがあったんですがそれ以上でした。当時は設定発表あったんで6の札ぶっ刺さって「こんなんカンタンにツモれると思うなよ!」って悔しかったですね。その店、出なかった高設定は据え置くんですが翌日は別のプロに取られて9000枚出されてストレス上乗せでした(笑)。
−−そんな時期にスロマガに応募したんですか。
松本:実は僕、先に他誌の編集に応募してるんですよ。薬剤師辞めた時点で社員っていう立場じゃなくてフリーライターになりたかったんですけど、とりあえず自分の書いた原稿を送りつけて。でもやっぱり募集は編集だけでフリーライターは今はちょっと…ってなったんで、スロマガに応募したんです。同じ原稿を送りつけて。そしたら、とりあえずのお試しで「ALL設定バトル」に出させてもらうことになりました。機種はそれこそ「パチスロバイオハザード」で(笑)。
−−そこで実績を残して晴れてライター採用となったわけですね。
松本:手応えはありましたからね。でも、自分の原稿がほとんどそのまま雑誌になって「ああこれが全国のコンビニに並んでるんだ」と思った時は嬉しかったですね。でも2週間くらいほっとかれたんで、自分から編集長に電話して「どうなってますか」って聞いたら、翌日に新しい企画への出演オファーが来ました(笑)。

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−−物を書く仕事がしたい、っていうのが最大の動機ですか。
松本:もちろんそうですけど「もっとパチスロ打ちてえな」っていうのも大きかったですね。別の仕事しながらじゃ時間が足りないって思って。
−−パチスロに向き合う時間が。
松本:たとえ仕事を辞めても、パチスロ打てば稼げるしな…って。薬剤師って普通のお仕事よりも効率が良くて拘束時間が少ない方だと思いますけど、頑張っても頑張らなくても給料同じ、みたいのがストレスになりつつあったんですね。だったら「頑張ったね」って出来高払いにしてくれるパチスロのほうがよっぽどいい。パチプロにしろライターにしろ、フリーランスへの憧れみたいなものかも知れません。

パチスロ攻略マガジンのライターになってからの松本バッチの活躍は、もはや語るまでもないだろう。我々他人からは、順調に上り坂を歩んできたかのように見えるが、本人はあまりその感覚は無いと言う。松本に、これまで10年のライター業の中で印象的だった仕事を聞いてみた。

松本:もちろんデビューになったALL設定バトルは良く覚えてます。他だと…初めてのテレビの仕事が青森でのロケだったんですけど、1泊・2本撮りで1日目が終わった時に、仕事をくれた局の偉い人にボロクソにダメ出しされて「もう二度とテレビなんて出るか」って思ったのを覚えてますね。それでも、その方にはすげーお世話になってたんで「出たくないって言ってる場合じゃないな」と思い直して、次の日がんばってなんとか出来ましたけど。
−−そこで本当に心が折れてたら今の松本バッチは無かった…。
松本:そうかも(笑)。ただ、人前に出るの自体は嫌いじゃなかったんで。
−−転機みたいなのは何かありましたか。
松本:他誌の某大物ライターの番組にゲストで呼ばれた時ですかね。初めてその人に会った時「ああ、この人が今の業界のてっぺんか」って思いました。その収録の前日は緊張なのか何なのか全く寝られなかったんですけど、面白く出来たみたいで急遽放送が前編後編に分けられて、爪痕は残せました。そこで一気にブレイク、とまではいきませんでしたけど階段は数段登れたかな、と。

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ライターとして、業界のトップクラスにまでたどり着いた松本バッチのモチベーションは、今どこにあるのだろうか。

−−パチスロライターという肩書きですが、最近はほとんど映像の仕事ですよね。
松本:ライターは物を書いてなんぼ、なんて今は言いませんよ。時代がそうなってきてますし、言いたいことを形にする、という事では同じです。でも、全く文章を書かなくなったら寂しいですよね。
−−ライター・松本バッチは何を伝えたいんですか。
松本:見てる人が楽しめるように「臨場感のある実戦」になるよう心がけてますね。たとえそこに到達できなくても「この台はこうなってこうなれば出そうだな」とか思ってもらえるように。とにかく僕の実戦映像を見て「明日打とうかな」って思ってもらえればいいかな。もちろん、自分自身がこの台面白いって思ってなきゃ出来ないやり方ですけど、幸いなことに今までいろいろな機種ありましたが「救いようがねえな」ってのはなかったんで。
−−目標みたいなものはありますか。
松本:もちろん、自分が所属している媒体が一番面白いなって思ってもらいたいし、てっぺんにしたいです。それはずっと思ってます。それは僕一人の力じゃなく、みんなでやらなきゃいけないんですけど。
−−個人的なことでは何か。
松本:震災があった時、福島の実家が被災して通りの向かい側からあっちが避難指定地域だみたいになったんです。田畑がダメになる牛がダメになる…ってなった時に、ある程度のお金さえあればなんとかなるし、逆に無ければ何も出来ない、っていう差を痛感してしまったんで、喰っていけるだけの仕事じゃなくてもっと頑張らないとって思いました。その時に目標を考えたんですが、他人とカブらないのはもちろんのことですが、誰かの椅子を奪い取るのは無理だなと。ただ、自分がパチスロに対して正直に接していった場合に「こんな仕事なら松本バッチだな」っていう"ドラフト1位"の立場になれるようにと思ってます。
−−震災がきっかけだったんですね。
松本:そうですね。お金はあるに越したことはないですし、それこそ他誌の某大物ライターさんの言葉なんですが「俺が安いギャラで仕事してたら後輩のお前らはそれ以上くださいって言えないだろ」って。パチスロライターの価値を上げるのはライター自身だということです。メーカーのイベントを一緒にした時にも、前日入りして一日中苦労したメインMCのパチスロライターよりも、30分だけふらっとステージに上ったパチスロを知らないTVタレントだったらタレントのほうがギャラ高いんだろうな、って話をした時に「お前らもそろそろその矛盾を考えていく立場にならなきゃ」って言われましたね。

パチスロに対して正直に向き合うことを信条とする松本バッチ。努力の末、ライター業界を牽引する立場ともなり、その存在感はますます輝きを増していく。

(#007に続く)

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