CALL TO ME.
(ない、ない…ないっ!)
せわしなくマウスを動かす。マイドキュメントの中にも、ごみ箱の中にも原稿は見つからない。
「優希、どういうことだよ!」
返事はない。
「おい、優希!!」
いつの間にか大きくなった声が部屋の中に虚しく響き渡る。席を立ち、部屋の外に出るとやはり優希の姿は無くなっていた。
(ちくしょう…どういうことだよ!)
誰もいなくなった廊下を眺めながら、もう一度優希の言葉を思い出す。
『ジャイ論LABOなんてものはもう無いんです。無くなったんです。』
優希は「無くなった」と言っていた。最初から存在しなかったわけではない。
それは当然である。実際世に出ているパチマガには「ジャイ論LABO」が掲載されていた、そんなことは筆者の私が一番わかっている。雑誌のリニューアルでいろんな企画が終了を迎える中、形を変えながらも連載を継続できたことを誇らしくすら思っていた。
(無くなった…)
だとしたら、あの1ページはどうなってしまったのだろうか。雑誌というものは印刷の仕組上、簡単にページを減らしたりなんてできない。1ページまるまる白紙で雑誌を売り出すなんてことはありえないわけだ。
(担当君はまだいるはず…)
当然、そのページのことを担当編集が知らないはずがない。慌てて受話器を上げ、別フロアにいる担当に内線をかける。
鳴り続けるコール音。22時過ぎという遅い時間ではあるが、編集部に誰もいないなんてことは考えづらい。
やはり、何かがおかしい…受話器を下ろし、直接編集部に向かおうとしたその時、コール音が止まった。
「もしもし?」
声の主は矢吹ライトだった。
「矢吹!? なんでそんなところに…」
「パチマガの編集部がみんな帰っちゃったから、留守番してたんですよ。」
(留守番?)
「ジャイさんから電話がかかってくるはずやから、留守番しとけって。」
「誰に頼まれた!?」
「そうそう、ジャイさんから連絡来たらこいつをメールしてくれ、って言われてたんで送りますね。」
「だから、質問に答えなさい!」
当然、その問いにも答えない矢吹。そして、パソコンには1枚の画像が添付されたメールが届いた。
「また、クイズか?」
「とりあえずそれを解いてから話しましょ。何か機種名の事らしいんで、わかったら
漢字で返信してください。」
淡々と説明をする矢吹の声は、もう耳には届いていない。頭を目の前のディスプレイに集中させる。
「なんか、『極上女子』ってちょっとイヤらしいっすよね。」
なおも軽口を叩く矢吹の声をそっと受け流し、閃いた答えをキーボードに打ち込んだ。