問題を覗き込んで数分。一向に答えが浮かんでこない。
(くそっ、どうしたらいいんだ!)
自信満々に対応をしたものの、まったく見当すらつかない。
「あれ、ジャイさんわからないんですか?」
「うるさい、静かにしてろ!」
「ちょっとは期待してたんですけどね…これは新連載の問題はもっと簡単にしなきゃダメですかね。」
いやらしく笑みを浮かべる助六の煽りが止まらない。
「今日全問正解してきたのもまぐれだったんじゃないですか?」
(そんなわけねーだろ、6問もまぐれがあってたまるか!)
そのとき私の頭に柔らかな光が降り注いだ。
(6問…!?)
ペンと紙をつかみ取り、思い浮かんだ文字を書き並べていく。
「助ちゃん、最後にふさわしい素晴らしい問題だったよ。」
「わかったのか、ジャイロ!?」
隣にいたドテチンが私の書いたメモを覗き込む。
「この数字は、今日解いてきた問題とその答えを表していたんですよ。『5の3』だったら5問目の答えの3文字目、『エ』になります。そうやって全部当てはめていくと…。」
「エビ、アンコウ、その次は? という文章になる…海物語の図柄、すなわち答えは『ジュゴン』だ!」
渾身の力を込めて、人差し指をまっすぐ助六の顔へ向ける。
(決まったな…)
「しまったなぁ…煽るつもりがヒントになっちゃったみたいですね。」
「正解なのか?」
ドテチンの問いに、助六が首を縦に振った。
(終わった…そして、勝った!)
しかし、どうやら助六は納得がいってないらしい。
「でも、僕の言葉がなかったら正解できなかったんじゃないんですか…それじゃぁ完全クリアにはならないでしょ。」
「見苦しいぞ、助六!」
食い下がる助六をドテチンが厳しく制する。
「そうだ、正解したんだからページを返せ!」
「いやだ、いやだ…あのページは僕がもらうんだ!」
そう叫んだ刹那、助六がいきなり私のもとに飛び込んできた。
「…!! おい、助六! どうしたんだ!?」
激しく私につかみかかってくる助六。
「おい、やめろっ、やめろー!!」
暴れてもみくちゃにされていく中、私の意識は次第に薄れていった…。
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「……さん、ジャイさん! 起きてください!」
気が付くと、私は自分の机の上に突っ伏していた。助六が私の肩を揺り動かす。
「なんだ、助六、私のページは渡さないぞ!!」
肩をつかむ助六から慌てて身を剥がし、睨み付けた。
「何言ってるんですかジャイさん。もうすぐ終電ですよ! 寝ぼけてる場合じゃないですから。」
(!?)
「あれ、もしかして私寝てた?」
「ええ、ぐっすりと1時間ほど。」
そういえば襟元がしっかり湿っている。どうやら本当に眠っていたようだ。
「じゃあ、もう謎は解かなくていいのか?」
「もう…変な夢でも見てたんじゃないんですか?」
私が目を覚ましたことを確認して、助六が帰り支度を始める。
(ははっ、夢か…)
とりあえず、自分の連載が終了にならなかったことに大きな安堵をしたものの、目の前にタイトルしか書かれていない「ジャイ論LABO」のファイルがあることに気が付く。
時計の針は24時を指そうとしていた。
「書ける原稿があるだけいいか。」
そう呟きながら、パソコンの電源を落として鞄を片付け始める。今夜は徹夜で原稿書きになりそうだ。
「連載といえば、ジャイさん。今度雑誌の企画で面白そうなこと考えたんですけど。」
「お、おう。一応聞いておこうか。」
ちょっとだけいやな予感を抱きつつも、帰る準備をしながら助六の話に耳を傾ける。朝から降っていた雨はいつの間にか止んでいるようだった。
END