約16年前の1998年12月18日に「ビーナスライン」という台がホール導入され、導入初日から攻略法が発覚しました。まぁ、攻略法という割にはとてもシンプル……逆押しでしっかりと小役を狙うだけ。しかしながら全ての小役を奪取出来れば、設定1でも機械割約128%を叩き出せるというとてつもない破壊力でした。
当然自分もこの攻略法で動き回っていたのですが、導入10日ほどで攻略法は全国的に知れ渡り、多くのホールが逆押し禁止→シマ閉鎖という流れ。最終的には翌月の1月18日にメーカーが全額保証で撤去するという形で幕を下ろすのですが、その期間まではレディース台として稼働させていたり、順押しのみ可の1回交換だったり、苦肉の策的な方法で営業するホールも存在していたという案配。実質逆押しができたのは、全国的に見て1月10日くらいが限界だったのではないでしょうか。
そんな訳で、自分もその頃になるとこのネタに関しては諦めムードだったのですが、忘れもしない1月15日。すでに「シマ閉鎖」という対策をしていたホールの様子を再確認しに行ったところ、何故かビーナスラインのシマが稼働していたのです。
10台ほどあるシマに客は2人。しかし、攻略法をやっている打ち手は皆無。自分も最初は順押し消化で打ち始めたのですが、試しに逆押しで打ってみたところ店員さんが注意しに来ない……なんと、そのまま終日逆押しでプレイする事ができたのです。翌日、朝から行くのは露骨と思って昼くらいから向かってみるも、ビーナスのシマは変わらず営業中。結局このホールでは、撤去期限最終日である17日まで逆押しで打ててしまったのでした。
ちなみに最終日には、逆押しをしている打ち手は3人ほど集まっていました。それでも攻略法末期にして、この状態は珍しい。一旦シマを閉鎖した事から、「あのホールは対策されている」という情報が流れ、攻略プロが足を運ばなかったのでしょう。
しかし、このホールで気になる事が一つありました。それは16日の夕方から、白シャツ姿の役職と思われる店員がビーナスのシマをずっと見つめていたのです。この時、最初は注意されるものだと思い、自分は用心していました。しかし、結局撤去期限最終日まで注意される事はなく、その役職はただただ様子を伺うだけ。
そんな訳で最終日。ジェットカウンターにコインを流している最中、自分はその役職に向かって「ペコリ」と頭を下げたのでした。そうしたら役職がこちらに近づいてきて、こう言ってきたのです。
「一時はプロ連中が仲間連れて集まってきたからシマ閉鎖にしたけれど、基本的にうちは客の自由に打ってもらうのが信条。パチスロの魅力もそこにあると思っているんだ」……と。
続けて、こうも言ってきました。
「シマ開放後に来た君たちは仲間を呼ぶ事もなく、一生懸命打ってくれた。仲間を呼ぶ素振りを見せたらすぐにでも再びシマ閉鎖にするつもりでいたけれど、それをする事なく、当店が導入した機種で最後まで遊んでくれた。本当にありがとう」……と。
ジェットカウンターに並んでいた他の逆押しをしていた人も、その会話を聞いて役職に頭をペコリ。「こんな信条を持っているホールが実際にあるんだ」と心温まったと同時に、攻略法目当てでこのホールに来た事をなんだかとても恥ずかしく思ってしまいました。
ちなみにこのホールは、当時住んでいた地域から電車で2時間ほど。かなり遠方ではありましたが、その後、新機種模索ページ用に新台のデータ取りをする際は、極力このホールを使うようになりました。と言うのも、このデータ取りは自費で、さらに変則押し等で意図的に小役をこぼしたりする必要があったので、どうせ損をするのなら、このホールで気持ち良く損をしたかったから。
パチスロで稼ぐ事しか頭の無い自分を、このような考えに至らせたのは後にも先にもこのホールだけ。情報伝達スピードが早く、抜ける時に抜きまくれ的な打ち手が多い昨今では、もう味わう事は出来ないであろう、とても懐かしい想い出です。
(しのけん)
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